ピロシキ

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のピロシキのレビュー・感想・評価

3.1
「これぞ、ウェス・アンダーソン」と評される領域を、突き抜けてしまったように感じる。簡潔に言うと、凝りすぎ、である。画面にほとんど映らない範囲にまで行き渡る、緻密さと完璧主義。ウェス・アンダーソンは、ロイ・アンダーソンになろうとしているのだろうか。けっきょく開始数分で見慣れてしまってからは、不親切なほどに目まぐるしいストーリーをただ追うことに、必死になってしまっていた。

改めてウェス・アンダーソンの過去作品を思い返すと、そのどれにも共通して中心にあったのは「情」だった。友人、恋人、愛人、家族、師弟、あるいは飼い犬と飼い主のあいだに存在していた、愛情とか友情とかそういうやつ。今回独立したストーリーのそれぞれにも、あったはずである。しかしハッキリとは見えなかった。どれだけ早回ししたとしても、やはり人物が多すぎるゆえに、圧倒的に深掘りが足りなかったのだと思う。

ビル・マーレイ演じるフレンチ・ディスパッチ編集長は、記者に対して必ず「意図が伝わるように書け」と話していたとのこと。しかしその言葉と裏腹に、この作品全体を通しての意図は、僕にはあんまり伝わらなかったみたい。あと副題、絶対に要らない。
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