滝井椎野

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊の滝井椎野のレビュー・感想・評価

3.9
オムニバス形式で進行していく本作、それぞれの話に記者による個性が溢れており、ジャンルの違いは勿論、こだわりやユーモア、視点等と記事の後ろの人物が見えてくるような作りが面白く、本当に一冊の雑誌を捲っていっているように感じられて良かった。
見事なのが、一貫して平面的な画作りがされており、あくまで文章と挿絵で描かれた作品であるというのが強調されている。そこに制作陣の変態的ともいえるこだわりが感じられた。そこに挟まれる色使いも素晴らしく、映画に収まらないアート作品を観ているような不思議な感覚に浸ることができた。
最後まで観終えると不思議なことに、この架空の町と雑誌に今までずっと親しんできたような愛着を感じ、歴史を編んできた雑誌の廃刊を寂しく感じてしまった。それゆえに、編集長追悼の記事を記者達みんなで書こうというラストは何とも嬉しく温かい気持ちに包まれた。
ゴーストバスターズ最新作に続いてビル・マーレイが見れて良かった。彼にはまだまだ元気に演技を続けてもらいたいものである。
滝井椎野

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