MikiMickle

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のMikiMickleのレビュー・感想・評価

3.6
今作も、思いっきりウェス・アンダーソン監督の作り上げる世界そのもの。
おもちゃ箱のようなドールハウスのような“箱庭”的世界は、心躍る色使いに溢れ、
セットの細かな小道具や壁紙だけでなく、キャストの服装や小物にいたるまで、キュートでオシャレでかわいい!!
雑誌の表紙も全て素敵過ぎて欲しくなる!

アンダーソン監督の特徴である、シンメトリーと画面をスライドするカメラアングルとカラフルな色合いも相変わらず。
文字の羅列や、画面が白黒に変化したり、画角が変わったりの映像的ギミックや面白さが満載で、今回更に工夫が凝らされ、あんなシーンやこんなシーンにワクワクが止まらない!

そして、ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ティルダ・スウィントン、エイドリアン・ブロディ、ウィリアム・デフォーなどの安定の常連俳優や、ベニチオ・デル・トロ、フランシス・マクドーマンド、レア・セドゥ、ティモシー・シャラメなどの初登場俳優。豪華過ぎる。
撮影中、同じホテルで食住をずっと共にする、まさにファミリー的な存在である彼らの息はピッタリで、映画と言うものは俳優陣と制作陣と撮影全てが一体となって作り上げる総合芸術であると再認識させられる。見ていて、お互いの信頼関係や仲の良さが伝わってくるのが不思議。
愛すべき曲者たちの飄々とした佇まいに否が応でも笑いが浮かぶ。

そして、今作の元となっているのが雑誌「ニューヨーカー」。監督が生涯かけてずっと集めつづけている「ニューヨーカー」へのオマージュと尊敬と愛に溢れている。
局長の死は、段々と衰退傾向にある活字文化を表現しているようにも思えるけれども、
しかしながら熱意と愛情をもってして、いつまでも続いていく文化である事もしっかり伝わってくる。

エピローグと3つのエピソードによる今作。楽しくて愉快でブラックでキュートでシニカルで、なぜだか最後には涙が潤んでしまった。幸せな時間だった。
MikiMickle

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