しゅんまつもと

シライサンのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

シライサン(2020年製作の映画)
3.9
個人的にここ数年の日本のホラーでは断トツで良かった。やっと新鮮なホラー映画が見れた嬉しさが溢れる。

「承認欲求」と「死」をシライサンに込めて、かつ「目を逸らさないこと」が唯一の対処法という映画の鑑賞の意味をまたひとつ変える設定を生み出したのも素晴らしい。女子高生グループもおじさんもなぜか登場人物に同化して、怖いシーンを必死に見つめてしまうのだ。この映画の面白いところはがんばって見つめるが故に後半には不思議と怖さにも慣れてきてしまうところ。

映画的なシーンのバランスがいろいろと破綻しているのも面白い。瑞紀と春男が食事をしながら会話するシーンの正面ショットの切り返しとか超面白い。なにあれ。その前の春男がコンビニで二つのお弁当のどちらを手に取るかで迷うシーンは素直にグッとくる。まっっったく物語に関係はないけどそういう描写が物語中の人間を生き生きとさせる。
いわゆる怖い話のオチに冷静にいちいちツッコミを入れる瑞紀(「次は、お前だ!!!」⇒「え、どういうこと?」)とかやっぱり胡散臭い忍成修吾、やっぱり不幸になりそうな谷村美月、正気か?と疑いたくなる山道でのくだりのあれこれ、あざといメタ視点台詞の数々と笑いどころ盛り沢山。いや、普通にホラー描写も良いです。

イットフォローズ的な結末を期待したものの、これはこれで個人的には好き。2人の繋がり、記憶の断片を「味」と「感触」でもって甦らせるのは普通に感動してしまった。