けーはち

ミュウツーの逆襲 完全版のけーはちのレビュー・感想・評価

ミュウツーの逆襲 完全版(1998年製作の映画)
3.2
ポケモン映画初作。少年たちの友情成長譚である本編と隔絶した異例の暗さ。桁外れの超能力と知能を持つスーパーミュータントポケモンとして誕生、己の存在意義に苦悩、やがて己を創造した人間に憎悪すら抱くX-MEN+フランケンシュタインの怪物と言うべき存在ミュウツー。人間とポケモンのパートナーシップを否定、全てを壊し尽くそうとする。それを命懸けで止める主人公サトシとポケモンらの絆に胸を打たれ自分達の記憶を人間から抹消して姿を消す、おおよそX-MENみたいなSFアクションスリラー。思春期的なアイデンティティクライシスを、ポケモンキッズとしては何の疑いもなく人間のパートナーであるポケモンに憎悪とともにぶつけられ、当時のキッズの心に衝撃作として残った(まあ、私は世代じゃないが、そういう評判ではあるので……)シリアスなテーマ性。「人の能力を遥かに超える人工被造物を、いかにコントロールするか」という観点だと、AI暴走系のSFにも繋がる広がりのある作品だと思う。

ちなみに、今ソフト化されている85分の完全版より、公開版は10分短かったようで、研究者が死んだ自分の娘の人間のクローンを作る冒頭のくだりがカットされているそうだ。

人間のクローンを作るとなるとキッズムービーでは倫理的に賛否両論なのでカットも頷けるが、となるとミュウツーが何のために生まれたのかは、それこそ益々分からない事になってしまうのだろうな。