囚人13号

三里塚 第二砦の人々の囚人13号のレビュー・感想・評価

三里塚 第二砦の人々(1971年製作の映画)
4.5
前にも増して戦闘メインに構築されているためカメラは最前線にまで出向き、人間がぶつかり合う瞬間からその表情まで全てを記録している。報道陣や子供が入り乱れてもそこにカメラを意識する余裕のある者はいない、またカメラマンですら自分が光景を記録していることを忘れている時があったと思う。本当の死線ではカメラなど気にならない、これは極めて重要かつ映画的な事実であり、しかも常に中立であるはずというドキュメンタリーの約束事を放棄して映画は農民側に肩入れしているのだが、そこには文字通り誰の"意図"も絡んでいない。

ただ数百人の怒号が飛び交う中で音響係が被写体となる人間の声をしっかりと拾っている、荒れる不特定多数の中の誰とも知れない"個"が際立つ瞬間は単なる記録よりも遥かに残酷で生々しい。殊更「親子もろとも殺せ!」と叫ぶ母の横で明らかに死への恐怖を隠せない子供を捉えたショットなどがあると、何故これが撮れたのかとドキュメンタリーの在り方を根本から疑わねばならなくなった。
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