囚人13号

階級関係 -カフカ「アメリカ」より-の囚人13号のレビュー・感想・評価

4.0
本作は例外的に「シネマ」の輪郭を留めているように思えるが、この現象は労働/人種コンプレックスというカフカ的主題に(ナチス占領下のフランスで育った)ストローブ=ユイレが強く共鳴しているゆえと知った。

人が笑ったりキャメラがズームするだけで動揺が生じ、フィックスも活劇的に使われているが対話を捉えた独特な切り返しはいかにもストローブ=ユイレ映画という感じ。
しかし台詞の機械的な間は厳守され、心情や多人称を括弧記号で書き分けてきたカフカの散文テクストもパヴェーゼの例と同じく全て韻文的に脚色される。

俺みたいな素人は所詮構図やカットなど「外側」からしか見れないので、台詞回しや原作との差異といった「内側」について詳細に書いてくれる解説書の存在はとてもありがたい。
囚人13号

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