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はちどりのsheのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
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はちどり。
英題House of Hummingbirdも良いなぁ。

14歳思春期の不安定さと瑞々しさ。
プラス1994年当時の韓国社会。
今観たい要素がぎゅぎゅっと詰まってた。

必要以上に言葉にしたりせず、映しきらず、少女の目を通して伝わってくる巧みな構成にどっぷり浸れる作品だった。オープニングから、画面の切り取り方にどきどき。

静かな分、ウニの瞳が繊細な表現で物語っていたのが胸に焼き付く。
ウニが言葉にしなくても、ウニの瞳を見ていれば、寂しさや不安が痛いほど伝わる。

世界は不思議で美しいと、
教えてくれる人と出会わなければ
救われずに閉じて潰れてしまう小さな世界は沢山あるだろう。
それに対する希望を静かに丁寧に作り物にせず描かれていたので、
観ているこちらもふつふつと心が揺さぶられ静かに感動した。
この気持ちはなんとも言葉にできないから、観て欲しい。

また、『82年生まれ、キム・ジヨン』でも描かれていた通り、母親と娘たちの立場があまりにもやるせなかった。ウニの思春期の心情に加えて、家庭内の動きにかなりしっかりと社会背景が盛り込まれているのも見所。

塾で先生が歌う「切れた指」も息を止めるようにして聴き入ってしまった。
先生はぽつぽつと話すけれど、そのどれもが彼女の生き様を切に込められている言葉であって、取り溢さないよう心の中に大事に残しておきたい光であり、お守りだった。


とにかく要素が多いが、台詞は少なく、描写をじっと観て感じて、そこにある感情を読み取ることに専念できるありがたい作品だった。

最後までウニの瞳が、表情が、良かった。理不尽に屈せず、新しいウニが開かれていくことを願ってやまない。
手紙とウニの姿で終わっていくラスト。エンドロールを眺めながら胸がいっぱいになった。
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