いち麦

はちどりのいち麦のレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.0
原題“벌새”より英題の方が馴染む。歪んだまま均衡保つ家族内関係を穏やかに炙り出す。家族の外にある、少女にとって光明に見えた救いの存在は儚く刹那的ですぐに褪せたり消えたりしていく。そんな中で深く強い結び付きを感じられた出会いの尊さが痛いほど胸に突き刺さる。
貫かれたウニの視点、人物像の繊細さと表情の切り取り方が巧み…どの人物も極力抑えた描写なのに、十分人物像を窺わせる最大限の効果を上げているのは見事。ただ、物語そのものに意外性やカタルシスを求めると一寸違うので、好みが分かれそうな作品だとは思う。

塾の漢文教師ヨンジは、自分にとっては、村上春樹の初期作品によく登場するメンター的キャラクター像を彷彿させ、愛しさすら感じずにはいられなかった。ハングルが主な韓国の若者にとっては、漢字ってとても面倒くさい存在なんだなぁ…と映画見て改めて実感したり。
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