めめ

燃ゆる女の肖像のめめのレビュー・感想・評価

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
4.3
最初から最後まで動く絵画のようなとても美しい映画…そして近年珍しい邦題のセンス◎
最近男臭い映画ばかり見ていた反動もあり、あまりに美しく清らかな空気感に圧倒された。主演ふたりの絵ヂカラが凄い。あまりにも美しすぎる。ここまで圧倒されてしまうのは私がアジア人だからなんだろうか?ヨーロッパの女性の美しさって言葉で表現が難しい。
明らかに意図的に、男性キャラクターが登場しない。名も知らぬ男性画家が描いた顔のない肖像画を燃やすマリアンヌ。映画に男性は登場しないのに、男性の権力に人生を決められてしまうエロイーズ。堕胎の技術をもった魔女のような老婆の医者。とくに堕胎のシーンは強いフェミニズム的なメッセージを感じた。
シアマ監督の言葉を借りれば「中絶をするのは子供が欲しくないからではない。中絶は女性が主体的に選択して望むときに子供を産むためのもの。それを観客に伝えたかった」と。(引用https://note.com/k18/n/n9d7b73d50185)
登場人物が少なく、音楽もなく、ほぼ暖炉の焚き火と波の環境音のみ。当たり前だが18世紀が舞台なので電子機器も登場しない。私たちの生活で音楽がない時なんてほぼ無い。静かで美しい映像に目も心も浄化された。その美しさを100分浴びた後の、終盤配達人の男性が登場したときの、「うわキモ!」という夢から覚めたような感覚といったら…。
「振り返ってよ!」と声をかけたエロイーズは、マリアンヌに画家として生きて欲しかったんだろうな。詩人としての思い出を選んだオルフェのように。
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