凄惨な仕打ちを受けようとも、自らの信念に従い、ヒトラーに屈しなかった男性がいたなんて言葉で表しきれないほどに凄すぎる。ヒトラーへの忠誠心を表面上のみ取り繕い、ごまかすことだって幾らでもできたはずだけれど、自らの心の声に一切の嘘はつかず正直に生き抜いた彼の姿はほかの何ものよりも美しくてカッコいい。彼を支え愛し続けた妻の献身さや夫を想う気持ちの強さも偉大で尊い。この作品に触れて、ありふれた日常を奪う戦争の悲惨さを感じるとともに、自分が思うように自由に生きられている今の生活はあたりまえではないのだと。ただ愛する妻と子と慎ましく暮らしていきたいだけなのに、それすらも叶わない世界はやはり残酷すぎる。二度と繰り返さないために、本作のような実話や歴史に基づいた作品に触れたり、その時代に生きた人々の心情に寄り添おうとすることが大切だと感じた。
テレンス・マリック作品は『ツリーオブライフ』を序盤で断念したきり、触れてはこなかったけれども、本作に関しては個人的に心の奥底まで刺さる心に残る作品だった。