猫

名もなき生涯の猫のレビュー・感想・評価

名もなき生涯(2019年製作の映画)
4.0
最後の
ジョージ・エリオットの言葉が胸に染みる。

オーストリアの風景が素晴らしい、
We live above the cloudって言ってたよな。
自分の信念を貫き通した一人の男の人生。
やりたくないことをやりたくない、って言ってるだけなのに。

私は彼の心情をずっと支持してたんだけど
最後の面会のシーンで
確かに彼は自分の信念を貫けていいかもしれないけれど
彼が遺した家族はどうなるの?我が儘とも言えるんじゃない?って
彼の信念に寄り添った妻を見て思った。
妻の方が大人なんじゃないかと。
反対に
生き延びるよう(私達のために生きて、と)
助けを求めたら
彼自身が、凝り固まった自分の自我から抜け出れるんじゃないかと
ちょっぴり思った。
映画の中の誰かの言葉にも出てきたと思うけれど
(それは反対の立場の人の事を言ってたと思うけれど)
凝り固まった意識から、自分で抜け出すのは大変だと思うから。 
でも!
この映画で大切な話は
そこじゃないんだ。
何事もなければ普通の暮らしができたんだよ、戦争とか
ドイツの支配とか
ハイル・ヒトラーとかなければ。
戦闘シーンは何もないけれど
普通の人の
(駆り出される男)
(残される家族・女)
戦争時の姿を
届いたかどうかわからない手紙の文面を通して
私たちの胸に刻ませる。
それが
テレンス・マリックの映像なんだ。
他人事じゃない、本当に。
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