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キーパー ある兵士の奇跡のsomaddesignのレビュー・感想・評価

キーパー ある兵士の奇跡(2018年製作の映画)
4.0
どんなに傷ついても、どっこい生きていかにゃいけない。

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1945年、イギリスの捕虜となったナチス兵トラウトマンは、収容所でサッカーをしていた折に地元チームの監督にスカウトされる。その後、名門サッカークラブのマンチェスター・シティFCにゴールキーパーとして入団するが、元ナチス兵という経歴から想像を絶する誹謗中傷を浴びせられてしまう。

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イギリスとドイツ。どちらも名GKを多数輩出しているGK王国なのが縁深い。70年以上前だとサッカーボールもユニフォームも全然違うのは当然として、キーパーが素手でプレーしてるのが驚き😳 絶対グローブしたほうがいい。

スポーツ映画としても、一人のヒューマンドラマとしても感動的だし、戦争で誰もが傷ついた時代に、どうにか前に進もうとした人々のドラマでもある。
サッカー詳しい人なら、イギリスの労働者階級と貴族オーナーの関係性とか、クラブチームの地域密着っぷり。サポーターの熱量の高さ/危うさetc…色々時代背景含めて見れてより楽しいハズ。
特にマンC入団時には2万人の抗議があったとか、シーズンチケット保有者が試合観戦をボイコット、イギリス中の団体が抗議の手紙を送ったそう。普通にドイツ人がイギリスに住むだけでも困難だった時代だろうに、プレーで信頼を得て居場所を得るのもスゴイ。
(ちなみにアドルフ・ダスラーと親交があったおかげで、イギリスで初めてアディダスを着用したスポーツ選手もトラウトマンだとか)
wikiを読んでしまうと、その後のトラウトマンとマーガレットの別れや再婚・再々婚とかあって、あのエンドロールの味わいがまた変わる。ディズニー映画調に「末長く仲良く暮らしましたとさ」てハッピーエンドにしないとモヤっちゃうもんね。

戦争の傷と赦しの部分は分かったけど、「なぜ赦そうと思えたのか」の部分がボヤボヤっとしてるし、全体的にテレビの再現ドラマを長尺で見てる気分。赦すのは簡単でなくても、互いに傷を抱えて前を向いて徐々に癒していくしかない……ってことかしら。


「愛を読むひと」であんなに可愛かったデヴィット・クロスが立派なおっさ……青年になってるのも熱いし、自らの罪に苦しみ七転八倒しながらも何度も立ち上がる姿が泣ける。

マーガレットを演じたフレイア・メーバー。戦後直後の濁色多い衣装設定の中で、ブロンドの髪と原色に近い衣装が多くて目立つ割りに、顔立ちが古風なのか、違和感なく薄幸を感じさせない。進歩的で芯の強い・夫を支えるだけじゃない対等のパートナーとして描かれてて良かった。

収容所の鬼軍曹・スマイス。「オールドガード」の守銭奴CEO、「クイーズ・ギャンビット」の小ボス役と最近よく見るハリー・メリング。手塚マンガの小悪党みたいな風貌で、嫌味な役を次々好演してるけど、どっかで見覚えあるなー……と思って調べたら「ハリー・ポッターシリーズ」のダドリーか! 見た目もキャラも変わりすぎ!

余談)
イギリスでのプレミア試写会では二人の息子と、80歳を超えたマーガレットの妹・バーバラも鑑賞したそう。全員が家族の物語に感動したとか。あの可愛い妹がいまオーバー80かー…と思うと隔世の感もするし、まだそんなに昔の話でもない気もする。

56本目
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