東朴幕院

家族を想うときの東朴幕院のレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.4
初ケン・ローチ監督作品を鑑賞。時間をやり繰りして初日に見られて良かった。
予想以上の直球を投げ込まれた感覚だ。そして7割方、男性観客だったがかなりの人数が鼻をすすっていた様な感じだった。
主人公は、元々建築関係の仕事をしていたが景気悪化の影響で異なる業界の仕事を転々とする事になってしまい、フランチャイズ制の運送業者となる。最初は勤勉さが幸いして無事にこなしていたが、息子の非行などで歯車が狂うと負の連鎖で家族がバラバラになっていく様を現代の資本主義や産業をリアルに切り取って描いている。
介護の仕事をしている妻のアビーが介護の優しさが癒しになっていたが徐々にそれが機能しない程、疲弊していく様は見ていて辛くなってしまった。また、息子の非行に対して『将来の選択肢を狭める様な事はするな』と言っていたのに、自らが取れる手段が無くなっていくのは皮肉だし、社会や行政も支える仕組みになっていない。冒頭の街を切り取るショットに坂道を老人と後ろ足1本失った3本足の犬と登って行くのが現在の英国を表しているのが印象的だ。
ラストは観客に委ねる形であるのが、強く胸打つものとなった。年の瀬に入って、とんでも無く気持ちを抉る作品を見てしまった。
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