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家族を想うときのsymaxのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
3.8
「はたらけどはたらけど、猶わが生活楽にならざり、ぢっと手を見る」石川啄木の歌がふっと思い出された、家族の物語。

貧困のスパイラルから抜け出そうと、配送業のフランチャイズ契約を結び自営の道を選ぶ父。
介護の現実を実感しながらも、「実の母」と思いながら、仕事を続ける母。
両親の想いを理解しながらも、先が見えてしまう現状に、抗おうとする息子。
家族が一緒にいる事を何より大切に想う娘。

家族皆が家族を、大切に思いながら、必死に頑張るけど、貧困という重しは、頑張れば頑張る程、家族をバラバラに追い込んでいきます。

現在のイギリスが舞台ですが、これはどの国であっても当てはまる物語。

格差社会、貧困、雇用等々、人々の生活の上には様々な問題があって、自分ではどうする事も出来ず、皆怒りを心に溜めながらも、家族の為に頑張り、ストレスを溜めていく。

ケン・ローチは、淡々と家族の生活を描写することによって、そのやるせなさを際立たせ、静かなる怒りを爆発させています。

それでも最後の救いは、家族全員が家族を大切に想っている事。

エンドクレジット後も、この家族には厳しい現実が突きつけられ、一発逆転は無いだろうけど、家族で乗り越えていかないといけないんですよね。

ラストシーンは、切ないですが、私がリッキーだとしても、同じ行動をとるかな。
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