FHT

家族を想うときのFHTのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.0
現代社会の労働に対しての対価や制度を問題視し、インターネットショッピングや高齢化社会が進行している今を支える配達業や介護職が低所得な訳を知りたい。

全ての行動においての理想にたどり着けない。家族のために精一杯努力してもうまくいかない。
息子には努力が足りないと言われ、罵声を浴びせられ、
娘には心配をかけてしまったり。
そんな時1番向き合ってくれるのは愛した妻だ。
しかし向き合った事でいい方向に向かうとは限らず心は切り裂かれる。

何もかも限界に達した時、父は何を思うのか。
答えが見えない。

この "答えが見えない" という事が、生きるという事をシャットダウンしてしまう原因なのではないだろうか。

シーンの1つで、息子が停学処分になり、父母と話し合いをする事になる。その時息子はスマホをいじり思春期ならではの "意地" でツンとしている。
父はその際急遽警察に行かないと行けなくなり、仕事を私用の用事で抜けなければいけなくなる。
その時労働主が「こっちの事は気にしなくていい 行ってこい」 という気持ちでいてくれれば良いものの、その労働主は自分主義。仕事の穴を空けるという事はこちらに多大なマイナスを浴びせる事になる。
なので労働主は "その行為は罰金対象になると100ポンドを要求する" と言う。
100ポンドは日本円で約15,000円程。
仕事を抜ける事で罰金も払わなければいけない。だが息子の将来の為に警察に行かなければいけない。そんな苦労があって、そんな息子の態度を受けたら父はどう思うだろうか。
このシーンでは父が怒り、息子のスマホを取り上げ「出て行け」と叱る。
母はそんな父を怒り、説得をする。
「スマホには何が入ってると思う? 友達との写真や、学校の宿題、誰かとのやりとり 、息子にとっては命のようなものなんだよ」と母が言う。

そんな夜 何かの物音がし、娘が様子を見に行く。
その時、娘は階段に飾っている家族の写真に ✖︎ をスプレーで塗られているのを目撃する。

そして翌朝、両親はそれを目撃する。
犯人はもちろん息子だ。更には父が仕事で使う車にまで落書きをされ、車のキーまで隠される。

そして父は仕事に行けずまた100ポンドの罰金を払わされるハメになる。

この時父は決して息子を見捨てたりはせず、息子の小さな古い自転車に乗り懸命に探す。

そして明くる日、息子は自宅に帰ってくる。
その時、父は初めて息子に手を出してしまう。
その後、やはり妻の寄り添いにより父は反省をし謝罪する。
この時となりにいた娘が「この仕事をする前の昔のパパに戻って欲しかった。車のキーを隠したのは私よ」 と泣きながらぬいぐるみの中にあるキーを取り出し、父に手渡した。

そのシーンを見ていて自分が感じた感情は不思議と "希望" だったのだ。

なぜ希望と思ったのか?
それは後から考えてたどり着いたものだが、この娘の発言により、また家族で突き進んでいこう と言う意思が感じられたからだ。

気が短く混乱する父をいつも優しい目で支えてくれる妻はどんな偉人より偉大だ。
そんな妻を愛す事ができた父は幸せだと思う。

そしてどんなどん底で深い穴に落ちたとしても、どこかに希望は存在している。1つの幸せを手にするのには10の苦労を背をわなければいけない。その1つの幸せの為に私達は戦わなければいけない。それが今を生きる人生なのかもしれない。そんな事を気付かされる作品でした。
FHT

FHT