ハマボーイ

家族を想うときのハマボーイのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
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『仕事』とは、人生を豊かにするために必要な人間の大切な営みだ。
夢や生きがい、または自分や大切な人を守るためのものかもしれない。

父親のリッキーは、家族のために宅配ドライバーとして働いている。トイレに行く暇もなく尿瓶を使うほどのハードワークだ。
介護士の母親アビーも忙しい日々に追われている。しかし、2人の子供たちも含めてこの家族には深い絆があった。トラブルがあっても寄り添い合い、お互いが家族を想っていた。観ている我々誰もがこの不器用で健気な家族のしあわせを願っていたにちがいない。

しかし、社会のシステムがこの家族を翻弄し搾取していった。
人生を豊かにするはずの『仕事』が、
人生を奪っていく。『仕事』をするために人生を費やし、気づけば疲弊し切った心で正常な判断は難しくなる。
家族を想えば思うほど、引き裂かれてしまう家族の時間。

ただ一緒にご飯を食べて笑いたかっただけなのに。1日どんなことがあったか聞いてほしいだけなのに。抱きしめて欲しかっただけなのに。そんなささやかな日々が、家族のただひとつの願いだった。

だから、久しぶりに家族みんなで夕食を食べるシーンがあまりにもしあわせそうすぎて、本当に辛かったし、聡明な娘がおこした行動には涙がとまらない。

仕事に行かないでと父親を心配して引き止める息子を振り払い仕事へ向かうリッキーの横顔はただただ切なく、心が引き裂かれるような気持ちだ。

原題はSorry We Missed You
それは宅配の不在票であり、父親が家族に残したメモでもある。
あなたに会えなくてごめんなさい。
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