「正常」という枠組みからははみ出してしまう者同士のラブストーリー
ドラン自身がインタビューで語るように、これまでの同性愛をモチーフとした作品群の中でも本作は最も「同性愛映画」らしくない作品となっている。
マティアスの嫉妬は多くの人間に認められる現象であり、マキシムが留保なく自分を受け入れてほしいとする渇望も同様に広く観察される欲求である。
そのような意味で普遍的な作品であると言える。
しかしながら、その普遍性を目指した部分がこれまでのドラン映画が有していたエッジを丸くさせてしまっているようにもみえる。
平たく言えば映画として「やや凡庸」な印象を拭えない。
「君の名前で僕を呼んで」は確かに素晴らしい映画だが、ドラン作品にはドラン作品としての良さがあると私は思う。
ファンとしてはドラン作品の良さが余り出ていないように感じられたため、この評点とした。