Montagne

ダニエルのMontagneのネタバレレビュー・内容・結末

ダニエル(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

多くの人にとっては自分の意思や身体が自分のものであることは自明である。
だが、100人に1人の割合でその自明性が崩れ落ちてしまう人がいる。

この映画は統合失調症に「関する」映画である。
「関する」というのは、この映画のルークの体験は精神医学的な説明のみで説明できるものではないためである。

主人公ルークは、いかにも気弱で風采のあがらない孤独な青年である。
どこか死の香りを纏っている危うさが備わっている。
そして、そのような彼の危うさの代弁者たる存在がダニエルである。

ダニエルはルークにとってのイマジナリーフレンドであるが、徐々にルークを侵食し、乗り越えようとする。
非常に原始的な存在であり、ユングの云うところの集合的無意識のイメージのごとく、個の存在を超えた破壊性を示していく。

私たちが映画を観る理由の一つに、自分という人間の生を歴史や世界という文脈のなかで感じ取りたいという欲望がある。この映画は、あなたが自身の暗闇、あるいは悪魔を多少でも理解したいという時の手助けにはなるかもしれない。

最後にルーク(ダニエル)に刺殺される、カウンセラーに触れる。端的に言えば、プロは無防備に、明らかに危険な状態と想定されるクライエントの家に夜に出向くことはない。あのシーンというのは、そのようなプロとしての禁忌を破って深みに触れようとする者への報いであるとも言えよう。人は分からないし、分からないなりの手つきが必要なのである。
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