このレビューはネタバレを含みます
「物語に銃が登場したら、それは撃たれなければならない」
確かチェーホフがそんな言葉を残していたと思うが、この作品においても同様のことが起こる（なお、他に言及している方はいらっしゃらないようだが、この作品は先の言葉とは別個で明らかにチェーホフからのオマージュを取り入れているように見える）。
この銃は主人公が実の父親から贈られたものであり、その銃によって主人公が最も避けるべきであった結末が実現されてしまう。
そういう構図で考えるならば、この結末というのは主人公個人の父親としての醜悪さ（不倫や身勝手な態度）に還元されるものでなく、西洋社会における「父親」という存在によって子殺しがなされたと見ることもできよう。
ヒュー・ジャックマンの演技プランは見事。
「いい父親」になりたいのに、空回りして全くそうはなれない父親を完璧にこなしている。
また、一般の方におかれては是非とも精神医療における専門家の説得には耳を傾けてもらいたい。
「僕は正常なんだ！」と混乱して叫ぶ青年が本当に自らの内的な力でもってして自分の衝動をコントロールできると思うのかをよく考えていただきたい。
楽観的な予測や「愛情」という耳障りの良い概念に頼るのは、まさに目前の大切な相手が直面している問題を見ようとしない心理的な防衛に過ぎない。
