YukiSano

エターナルズのYukiSanoのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
3.9
悠久の時を越え、永遠に紡ぐ愛。大自然と共に生きる魂。ガイアと溶け合うことで知る自分。宇宙の誕生から星の死。神々への反逆。

これはクロエジャオの作家性を借りてMCUが全く新たな地平へと挑戦することを高らかに謳いあげた実験映画。

ノマドランドと同じテーマとモチーフを使って神話の英雄を描く。故郷を追われ、悠久の時を流浪するエターナルズが選ぶ道はそれぞれ違う。善と悪ではなく、それぞれの正義の選択の結果が悲劇を生む。MCUのフェーズ4では在り来たりの勧善懲悪は姿を消して、ついに神の審判の是非に疑問を投げ掛ける。

正義とは何ぞや?
我々が信じる神とは?
一神教と多神教とは?

MCUはシャンチーに続いて、またもこっそり凄い挑戦をしている。西洋社会が信じてきたものが壊れ始めた今、アジアの精神を導入し、正義(神)について問いかける。

確かにクロエの神話性とMCUのエンタテインメントは水と油で、溶け合うところが難しい面もあった。しかし、黄金の夕日の中に包まれた太古の英雄を見たときにその崇高な神々への反逆、つまり西洋社会への疑問やアメリカの正義への不信感、キリスト教への問いかけにもなっていることに気付く。

また、MCUを否定する神々(スコセッシ、コッポラ、リドリー・スコットとか)への戦線布告ともとれそうな攻め方。

ドラマシリーズ「ロキ」や、「WHAT IF
?」でも時空を超えた存在達が現れ始めている。神々との戦いへと備えられつつある。

MCUはこれから前代未聞の敵と戦うことを宣言した。それは映画業界を超えて、あらゆる映像ジャンル、エンタテインメント文化に革命を起こすという決意のはず。

失敗するかもしれないし、誰も見たことのない地平に行くかもしれない。

ただ、その可能性を覗かせる最高に野心的な作品がエターナルズだ。
YukiSano

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