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カブールのツバメのくりふのレビュー・感想・評価

カブールのツバメ(2019年製作の映画)
4.5
【ツバメも鳴かずば】

たまたま場所・時間が合ったので劇場行ったら、1週間限定の特別上映だった。

過去、映画祭での上映はあったものの、今回はアフガン情勢へのカウンターとするため、難しい条件をかいくぐっての上映らしい。ル・シネマにかかるのって、けっこう大ごとじゃなかろうか?

タリバン支配下のカブール。1998年夏、愛ゆえの、ある残酷な出来事。

同題材だと『ブレッドウィナー(生きのびるために)』がありますが、あちらは児童書原作の、子供のサバイバル劇でした。こちらはアルジェリア出身でフランス在住、ヤスミナ・カドラの小説を原作とした、二組の夫婦に始まるサバイバル…を目指して、愛を貫く物語。

フランス映画で、台詞がフランス語で、はじめ萎えたのですが…男の、女の、熾烈な運命にやがて呑まれてしまい、気にならなくなった。

差別とたたかう女性…というより、男の変化を描いているのが特徴かと。その諧調はちょっと、ザックリしていましたが。また、変わると言っても、一番変化の必要なタリバンのリーダー格があれではね…。

フィクションの限界。やっぱり、現実は現実で変えるってことだよね。

ブルカを持たず、隠れてでも自由たらんとするズナイラが、フランス映画ならすぐ居そうな、魅力的なヒロインでしたが、ムスリムでもこういう女性、居るのだろうか?ちょっと無自覚すぎる気もしたけれど。

水彩画タッチはよく見るものだし、アニメらしさ、で言えばこの静的進行は…特に前半、けっこう退屈。が、あの展開がやってきて…

あの、ひとこと。どうしても、言い残したかったのでしょうねえ…。

変えられない地獄。しかし、そこで最後まで、人間たらんとするなら?

良くも悪くも、外国人視点による完成度だとは思うのですが、ちょっと、こうやられてしまうと、言葉が出ません。

他が荒くとも、ある一点から、傑作だと思いました。

<2021.10.11記>
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