symax

ウルフズ・コールのsymaxのレビュー・感想・評価

ウルフズ・コール(2019年製作の映画)
3.6
抜群の聴力"黄金の耳"とセンスを合わせ持つ仏海軍原子力潜水艦"チタン"のソナー員シャンテレッド〜又の名を"靴下"

シリア沖での特殊部隊移送勤務中、シャンテレッドは、正体不明の"音"を聴きますが、それが敵か動物か分からず判断に迷い、出した答えは"潜水艦ではない…"その時、鳴り響くソナー音"狼の歌"、それと呼応するように"チタン"は敵の攻撃を受けます。

艦長グランシャンの勇敢な行動により、辛くも難を逃れ無事に帰還する"チタン"

しかし、シャンテレッドの誤った判断により、ロシアとの関係が悪化してしまうフランス…

フランス版"クリムゾン・タイド"と言える一本。

"クリムゾン・タイド"は、潜水艦内でのミサイル発射を巡っての艦長と副艦長との駆け引きでしたが、本作は、謎のソナー"狼の歌"を軸に、その謎をシャンテレッドが懸命に解明しようとするなかで、人類滅亡となってしまうかもしれない世界的危機を回避する為、味方同士なのに、"チタン"と"レフローヤブル"という超攻撃型原子力潜水艦二隻の駆け引きが展開されます。

"潜水艦ものにハズレ無し"とよく言われますが、本作もなかなか魅せてくれます。

ただ、シャンテレッドは、天才肌故に肝心要のところで、まぁ、逃げてしまっているようで、物語が弱く思えるのですが、それを補うかのように素晴らしいのは、艦長二人と大将…

演じるのは、"レフローヤブル"艦長グランシャンにレダ・カデブ、"チタン"艦長ドルシにオマール・シー、現在のフランス映画界の重鎮二人に加えて、大将を演じたのは、私が大好きなマチュー・カソヴィッツ。

流石の重厚な演技で、潜水艦という超閉塞空間のなかでの未曾有の非常事態を軍人としての誇りを失わず、懸命に戦う様…本作の主役はこの三人の軍人達と言えます。

それにしても、"クリムゾン・タイド"でもそうでしたが、核ミサイル発射までのプロセスが本作でも丁寧に描かれていて、潜水艦の艦長と副艦長のプレッシャーって相当凄いのが分かりますが、窓もなくて、外の世界が全く見えない潜水艦の艦長と副艦長の二人に核のボタンを持たせる世界の怖さをビンビンに感じてしまいました。

軍人の意地が悪い方向に向いてしまった悲劇を描いた作品とも言えます。
symax

symax