今年豊作が多い日本映画の中でも、とても完成度が高い作品。冒頭のミステリー調の画作りから、作風がどんどん変わっていき少し戸惑ってしまったが、この世界が抱える問題に気づかさせる。俳優陣の演技が凄まじく、永作博美さんと蒔田彩珠さんが特に本作のクオリティをぐんと上げている。永作博美さんの言葉ではなく、表情で見せる演技に圧倒されるし、蒔田彩珠さんの喜怒哀楽の表現は若手とは思えないほど堂々とした演技で後半は輝き続けていた。そのため寄りのショットもバシバシ決まり、主人公たちの状況を丁寧に辿ることに成功している。一方でドラマ要素に振り切ったせいか、ポスターに「ヒューマンミステリー」とあるにも関わらず、ミステリー要素が最小限に留まっており、一部のシーンが映画の中でやや機能していないところがあり、映画全体の構成が気になってしまったが、それ抜きでも鑑賞する価値がある1本だ。
