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朝が来るのtomひでのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.0
特別養子縁組という制度から生まれる夫婦と実際に子供を産んだ母親(ひかり)の物語。監督・河瀬直美の視点は年齢的にも近いであろう子供を受け取る夫婦側にあるのかと思っていたが、意外にも立場的に弱い若い女性側に強く重点が置かれていた事に驚いた。しかしそれはとても良かったと思える。

=====以下ネタバレあり======

中学生のひかりが施設(ベビーバトン)のある広島に行き子供を産む準備をする。施設の人が撮るホームビデオに出てくる、ひかりと同じく施設で子供を生もうとする女性、誕生日を迎えて施設の人が準備してくれたケーキ、その前で流すボロボロ溢れる涙にこちらが泣きそうになった。詳しい事情はこの映画では一切語られないが画としてその涙を見せられると説明は要らない。めちゃくちゃいいシーン。

親はひかりの将来を案じて行動するが、現在のひかりの気持ちを受けとめてはいない。ひかりの心配をしているようで結局は自分自身の心配をしている。そのギャップから生まれる心のズレ。誰かを真剣に愛した事、その時間、その子供、全てを無かったことにしようとする人々…。

屈折していくひかりの弱さも指摘できるが、中学生の経験としては重すぎるので仕方ないと思える。ラストシーン、永作博美演じる栗原佐都子が涙を流して謝罪し「広島のおかあちゃんだよ」とひかりを優しく受け入れるシーンは感動的。

永作博美、蒔田彩珠、浅田美代子、良かった。
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