原作未読。辻村深月の小説は数冊しか読んだことがなく、思春期や青春が中心にあるものが多い気がしていたのだけど、こんな作風も書けるんだという驚きがまず第一にあった。養子縁組制度を巡る作品として分かりやすく纏まっていたと思う。
妊娠を望んでもできない夫婦/望まない妊娠、育ての親/産みの親、お互いの知り得ない背景をお互いが知り得ないまま出会ってしまうことで、二つのドラマが衝突する作り。
まず前提として、養子縁組制度を利用した栗原家に一切の後ろめたさが無く、血縁のある家庭と何ら違いの無い家族として描かれていたのがノイズが無く素晴らしかった。
逆に、ひかり（蒔田彩珠）の家族は彼女に対して十分な理解をしていたかというとそんなことは一切無い。親子の血縁の有無と是非に短絡的な因果は無い、という描かれ方は一周回って書き割り的な気もするけど、対比が重要となってくる今作に関しては正しい描かれ方だった。
一つ残念だったのは、例のある人物と対面する際に、第三者機関の介入が一切行われないこと。栗原家はどこかしらに電話したり相談したりもできたのでは？それをやってしまうとお話として破綻してしまうのは分かるけど、対面の直後に首尾良く警察が来るなどするのはご都合主義で少々アンフェアな気がした。
演技は全員抑える方向に統一されていて観易かった。発声がはっきりし過ぎていないのがリアル。特に、幸薄そうながら光差すような毎日を送っていた彼女が、次第に笑顔を失くしていく変遷を表現した蒔田彩珠の演技は手放しで賞賛もの。
時系列のシャッフル、視点の転換などがダイナミックに行われるけど、そこに一々テロップなどを入れず分からせるのも余計な情報を削ぎ落としていて良かった。
全編通して、よく言う「まるでドキュメンタリーのよう」な映画ではあったけど、中盤辺りで本当にドキュメンタリーな演出が施されるのは良い意味でヘンだった。縁組の実情への理解を、スクリーン越しに観客へ投げかける効果は十二分だったと思う。
ラストシークエンスで訪れる救い。あの頃の、笑顔で溢れていた景色の挿入で「浄化・救済」を再現する。あざといくらいの自然光撮影にも、意味があった。
その他、少し気になった点は、
○ 画面にテロップも番組タイトルも無いドキュメンタリー番組ある？ホームビデオみたいだったけど。
○ 新聞配達のパートはもっとあっていいのでは....？
○ エンドロールラストの声の演出は正直あざといと思ってしまった。ラストの表情で伝えたいことは分かったので、そこで急に説明的になる？という若干のモヤモヤ。
