このレビューはネタバレを含みます
いろいろな距離からいろいろなことを考えさせられる映画だったなぁ。
実話を基にしたというけど、実話の人はまあいうても普通の人。ブルーススプリングスティーンの熱烈なファン(ラストに150回?コンサートに行ったとか。知らんがな。普通ラストの数字は、イギリスの、パキスタン移民は○万人、とかいう社会的なメッセージが来るんちゃうのん?て思ってしまう)。
このエンディングの情報を見ると、この映画、本国ではブログを映画化した的なそういう軽いやつかな、などと思ってしまう。
でも、サッチャー時代の社会背景とか、現代に通じるヘイトデモのこととか社会派な一面もあって、あのあたりは現代社会の課題にも突き刺さるので、正露丸糖衣Aか?みたいな感じもある。
主人公の父親の、パキスタン移民(難民)第一世代の葛藤(イギリスで一旗あげたい、という若き日の思いと、挫折、「目立たなく生きていきたい」というコンプレックス、一方で家父長制の構造への盲信(でもないねんけど)があるという、複雑さもさらっとではあるけどわかりやすく描かれてるし、この辺の感じはグッとくる。
失業してもスーツ着てるのって、イギリス人よりもイギリス人的に振る舞わないと、という意識の現れで、一方でパキスタン人としてのアイデンティティも持ち続けるという、ダブルバインドの葛藤とかね。デモの時の息子を心配する感じとか、見てる側からはグッとくるんですよ。
音楽、詩、言葉(といった芸術といっていいかも)が、越境し、いろいろなものを結びつける力がある、というメッセージもある。隣の笹野高史(だろ?あの人はw)とはこれまでまったく交流なかったけど、ある意味で主人公の1番の理解者だったわけだし。
親友との喧嘩と仲直りも好きだよ。
(妹のサブストーリーも結構よい感じだった)。
男の子の成長譚みたいなオーセンティックなところもきっちり抑えてるし。
そんな感じなのに演出は、歌詞のプロジェクター投影とか、くどめのミュージカル仕立てとかもあって軽く軽く、見やすさを優先していくかんじで。
親友の親父のシーンはビジュアルも含めて爆笑なのよ。すげーシーンだなって思う。何見せられてるの?みたいな。
(たまたまか分からんけど、ラスト近くの主人公の演説シーンで、マイクの高さが合わなくて校長が調整するシーンがあるんですが、それいる?みたいな。あとクラブのシーンのダンスとウォークマンの音楽のミスマッチ感とかね。笑かしてますよね?的な演出)。
でもこういう演出って、映画っぽくて好きなんですよね(もちろんハマってるからやけど)。あー映画見てるわーって感じするんす。
ラスト、もっかい車エンストすると思ってたのにしなかったね。この辺で、ベタにはいかないぞ、という意志も感じた(そんな大したもんか?)。
とまあ感じること考えることが多様で、でも映画としてもケレン味があって、ブルーススプリングスティーンについてまったく知らない僕でも楽しめましたよ。
(しかし、勝手なイメージですが今ブルーススプリングスティーン聴いてるのって内陸部の保守層っぽいなって思うのはなぜだろう)。