Kaji

12番目の容疑者のKajiのネタバレレビュー・内容・結末

12番目の容疑者(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ミステリーに韓国の近代史と思想分断を入れ込んだワンシチュエーションサスペンス。

「オリエント喫茶」なる喫茶店に殺人事件を捜査する陸軍のキムギチェが入ってくるところから始まる。
文人文化人の集う喫茶店を舞台に聴き込みを主体とした会話で事件が解き明かされていく。
「誰が犯人なのか」で引っ張る。

1953年は南北の休戦協定が7月に結ばれ、スパイ戦が色濃かった時代。
その設定に載せて、言論弾圧や表現とイデオロギーの摩擦を入れ込んだ濃い内容。
ちょっと韓国の近現代史を知らないとつまらないと思う。
いわゆる「赤狩り」的な様相を醸し、軍事独裁下で軍人が捜査していたり、キーが南山だったり、共産主義がどのように見られていたかを知っておく必要がある。
捜査している人がいきなり弾圧的になる闇転が見どころ。
喫茶店のなまえからアガサクリスティの「オリエント急行殺人事件」を想起するが、オマージュ程度。
ネタバレマークをつけたのでバラすと、「オリエント急行殺人事件」は接点がないと思われた乗客全員が列車という密室空間で起こった殺人事件の共犯だった、という話。
名探偵ポアロが真相を暴く有名推理小説。映画化も複数。

今作は推理を暴くことではなく、時代の影を描いたと思う方が妥当。
サスペンスに盛り上がりはないけど、穏当だった軍人が豹変するので珍しくキムサンギョンがダークなキャラクターを演じていて良かった。やっぱこの方、演技が上手いし横分けが似合う。
Kaji

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