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さすらいのmanamiのレビュー・感想・評価

さすらい(1975年製作の映画)
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ヴィムヴェンダース作品鑑賞4作目。「1971年7月から10月まで11週間をかけて東ドイツ国境沿いで撮影した」らしい。んで、今作と『都会のアリス』『まわり道』とを合わせてロードムービー3部作、らしい。3作それぞれかなり趣きが違うけれど。リュディガーフォグラーとリサクロイツァーは全てに出演してる。
迷惑系ドライバー、子どもを車に乗せようとしてたのは何?誘拐未遂なの?その後も暴走行為を続け、最終的に自業自得ドボン。見ず知らずの男に服を借りたり、ちゃっかり車に同乗したりして、冷静に考えるとめっちゃ怖いよな。主人公をさしおいてジャケ写にまでなってるし、なんて図々しい奴なんだ。
そんな危険人物ローベルトをあっさり助けちゃうブルーノもブルーノよ。上裸オーバーオールは『Over Drive』MVを思い出すわよ。あのYUKIちゃんの爆発的可愛らしさはもちろん1ミリもないけどさ。
そしてけっこう序盤、ほぼ全裸になってのあのくだりは劇場公開時もモザイクだったのかな?だとしたら、そもそも何のためのシーンなんだ?
でも、たまたま知り合った女性を口説くために訪れた映画館でポンコツ技師をつい追い出しちゃって、成り行きで働くことになるくだりは好き。並行して描かれる印刷所の場面といい、仕事ができる人ってかっこいいよな。そして閉館後の映画館でダラダラするの羨ましいな。
あとはもう、全体的にこの上なく地味。ひたすらじっとりしていて、派手とか華とかの要素ゼロ。
「ルーン」て英語の意味とか、「傷あと通りのある無力村・不安村・死人山」とか、影絵から間を置いての口論とか、妻に先立たれた男とか、バイク強奪とか、実家に不法侵入とか、どことなくKing Gnu井口みのある映写技師とか、誰得モザイク露出とか、いまいち意図のつかめないシーンのオンパレード。すわ殴り合いかと思いきや、ケンカまでも地味だし。
堂々巡りで平行線で五十歩百歩な会話が延々と続く176分…何も起こらないと言ってももはや過言ではない。倍速にせず最後まで観た自分を褒めてあげたいわ。現代のタイパ感覚でなら90分ほどの作品になっちゃいそうね。ただ、そんな話を3時間かけて観るという贅沢さは味わえる。
それにどでかCARで共に過ごした数日間は彼らにとってはきっと、人生の節目節目でふっと記憶がよみがえるような、常に思い出すわけではないけど忘れ去ることもない、そんな数日間だったんだろうな。線路と道路とが並行して交差してやがて遠ざかっていくように、彼らもまた再び離れていく。
「END」の見せ方があまりにもオシャレで、良いもの観た感が最後の最後に爆上がる。

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