このレビューはネタバレを含みます
この映画の一面は、まだ何者でも無いが、やりたいことはある男女が出会って、惹かれあって、そして別れるラブストーリー。私には苦手な題材ではあるが、雰囲気のある現代のリアルなラブストーリー。
そして、もう一面は、何者かになりたい若者の前に立ちはだかる搾取構造なのだと思う。特に性加害の描写が顕著なので、女の子は気をつけた方が良い。
ユカを見るのが、監督の目線であり、小山田の目線なので、どこか男が理解出来ない女、的な見方があって、ヒサコ、バイト先の店長含め、女性の描き方が一面的なのは気になってしまったかな。
男も一通り欲求に忠実な品のない描かれ方だけど。
ユカ自身が何故嘘を身に纏うようになったのか、ユカが搾取される側から搾取する側に回ろうとした過程となるのがパート2。この構成がすごく良い。
搾取する側の人が使う言葉を真似したり、同じことをやってやろうとする。だからこそ長く同じ人と向き合うほど、無自覚の鎧が剥げ落ちていく。八方美人が限界を迎える。
ユカのことを、こういう女いるよね、ほんと分かんない、とどこか突き放しているようで、
口で嘘を吐く裏側でユカの体は忠実で、ストレスからやっているのであろう親指のささくれや、足にタバコを押し付けられたような傷跡があった(ようにみえた)り、小山田から突然キスをされて泣き出してしまったりする。
そこにはやりたいことの前に、女には立ちはだかる
障害の存在が歪み出ているような気さえした。
小山田がカメラマンとして雑誌の表紙のカメラマンになる間に、
北村が27歳でひとりでプロジェクトを任されるようになる間に。
ユカは色を失った。
そう、ここは2019年の東京。
やりたいことも、体も、優しさでさえ搾取される。
ユカを映したはずのカメラには、何も映っていない真っ白。
そこにあったはずの色は、人間はこの気持ち悪い社会の中で消えてしまったのだろうか。
洋題のcolorlessがぴったり。
演技経験無しで、ユカを演じきった石川瑠香さんはきちんとインティマシーコーディネーターとまでは言わないが、心のケアをされただろうか。ユカという役とはいえとてもしんどい撮影だったと思う。
金子大地さんの血走った目。本当に撮影の日寝不足でそのままぶつけたとか。本当に怖かった。
女性加害の現実、夢の搾取、割と怖かった作品だった分、俯瞰ではなく、小山田の視点に帰結したところが良かった。