このレビューはネタバレを含みます
☆☆☆★★★
『イントゥ・ザ・スカイ』の監督が、その前作に撮った音楽映画。
主演はこの後、『ジュディ 虹の彼方に』で印象的な演技を見せたジェシー・バックリー(公式サイトではバックリーなので)だけに、観る前から期待感が膨らむ。
観客7名 簡単に。
(本人曰く)イギリスで、男なのに女に生まれたイギリス人カントリー歌手。
好きな道を突き進むローズ。その為に周りに迷惑を掛ける日々だが、元から「パン屋で20年働くのは自分には無理だ!」…と、意に返さない。
そんな彼女を、多くの人が支援するも。母親だけはその姿を良しとしない。何よりも、自分の子供をないがしろにしている事が許せない。
映画は序盤から、ローズ目線で進んで行くだけに。この根深い母親との確執が少しずつ炙り出されて行く。
ただ好きなだけ。実力は有っても、歌い手がオーディエンスに対して。自分自身を曝け出し、《何を伝えたいのか?》が。はっきりと歌声に現れなければ、人々の心の隙間に入り込まず〝単なる歌の上手い人〟にしかすぎない。
それを初めて意識するのが、ある有名なDJに言われた「伝えたいメッセージは何だい?」との問いかけ。
その言葉があり。更には、スザンヌの夫に言われた一言で。今の自分の置かれた立場と共に、しっかりと母親との確執と。幼い2人の子供との関係を見つめ直すローズ。
それまでの展開で、まるで『ジュディ 虹の彼方に』でのジュディの姿を想起させるローズの描かれ方で。その後のジェシー・バックリーの活躍を予見しているかの様でもありました。
「責任は持って欲しかったけど、希望は捨てて欲しくなかった!」
やっと母親との確執も和解し、今こそ自分のあるべき姿を探しに憧れの地とへ降り立つローズ。
あまりにも出来過ぎの展開…と思わせながら、映画は別の展開へ。
♬どこより、故郷が1番♬
♬どこより、ここが1番♬
♬靴の踵を3回鳴らそう♬
最後も『オズの魔法使』を表す歌で締め、不思議な思いを感じつつも。素敵なジェシー・バックリーの笑顔で幸せな気持ちにさせてくれる良作でした。
2020年6月28日 角川シネマ有楽町