音楽を愛する全ての人に届いて欲しい。
そして、出来るなら劇場で観て頂きたい。
現実世界において、生では体験不可能であるから。しかし、映画館という夢と狂気に満ちた場所では、擬似的に生で体験できるライブパフォーマンスであるから。
南北朝〜室町の間で活躍した「犬王」という能楽師の物語。その当時、全く新しいパフォーマンスを演じ、世間を熱狂させた。
能楽に現代のライブパフォーマンスが取り入れられ、アヴちゃん（女王蜂）、森山未來の圧倒的な歌唱力によって、幻想的に再現される。
《全てを語れ。その全身で舞い上がれ。》
酷い外見に覆われ、忌み子として犬王は生まれる。犬王は琵琶法師「友魚」と出会い、能楽師として「平家物語 犬王」を演じることとなる。
不思議な絆で結ばれた友魚と犬王は、その新しい能楽によって世間を酔狂の渦へ誘う。
二人の物語を、取りこぼされた平家の物語を、亡き平家のために捧げ、舞う。
二人の誇りをもって生きる姿に惹かれ、その数奇な絆に純粋な愛を感じる。能楽ライブとしても、そのハイセンスな世界観も、丁寧に紡がれたストーリーもどれも一級品である。余韻が強く強く残る楽しい映画体験だった。
