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犬王のBmのネタバレレビュー・内容・結末

犬王(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

原作既読。
90分とは思えないほど濃密で、原作からのエッセンスの抽出が上手い。
謡パートは若干冗長に感じるが、映像がすごい。


その一方で、映像の演出としての
“古い能楽(猿楽)”に対する犬王と友一の“新しいパフォーマンス”がロック調というのは違和感があった。
室町時代における猿楽の能は現在の能楽とは違って伝統文化ではないので、ロックとの対比は文脈的におかしいように感じる。
たしかに令和で能狂言は古典だが、親しみのなさで言えばクイーンも同じくらい。
ロックが斬新で革新的なカウンターカルチャーであるという考えがかなり古いと思うのだが、監督とのジェネレーションギャップだろうか。
その後の舞もバレエやブレイクダンスからの借用なのが惜しい。

室町時代に存在しない/映像に映っていない楽器の音が鳴るのはそういう演出だと思えるので気にならないが、
演奏している様子が描かれている楽器の音が入っていないのは気になってしまう。
和楽器をもっと使っても良かったと思うのだが、和の反対が洋だから、犬王のパフォーマンスに和の要素は少ないということだろうか。


犬王が自ら名乗った名を権力者から一字取った道阿弥と名を変えた。
友一とともに始めた粗野な路上パフォーマンスは河原で身体障害者たちを熱狂させたが、
その後の彼の芸風は天女の舞に代表される優美さを特徴とするものである。

名と物語を手放して一人栄華を極めた犬王が、
死後元の名前に戻って友魚とまた二人で楽しくラストは原作と少し違うが非常に良かった。
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