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生きるのnのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
4.8
いまさらおれが言うまでもなく、バカみたいな傑作である。

それゆえ、いろんな視点から書けてしまうのだが、めんどくさいので、というかキリが無さそうなので、だいたい主要なポイントでいうと。

・最近、人生30に近づいてきたこともあり、死についてよく考えるのだが、それに伴って、哲学関係の本などをよく読んでいたという自分の状況があり。そのタイミング的に。

・いろんな哲学者がいるが、結局だいたいここに行き着く。
「モノを作ることで生きている感触あるいは幸福感が得られる」
なんか、ゴーゴリ的とかドストエフスキーとか書いてる人いるけど、この映画はトルストイの『イワン・イリイチの死』がベース。

・圧倒的に悪そうなやつはいるものの、概して「白黒つける」感じで人間を描かない、人間の多面性を常に感じさせる脚本(傑作には必須。最近でいうと、スリービルボード)。
話のオトし方も、人間の複雑さを残しつつ、希望は一応与える、という超絶バランス。

・伴って現実の残酷さがちゃんと描かれていること。へんな「甘さ」がないこと。本当の感動には、振れ幅が必要。

・上記2つは、言い換えれば「知性的」ということなんだと思う。

・同じく脚本について、帽子、うさぎのぬいぐるみなど、モチーフの使い方がやばい。

・フリとオチという超基本的かつシンプルなテクニックというか技術の重要性を改めて感じさせてくれる。

・けっこうそのときの感情を口で説明するところが多くて、そしてその手法はときおり批判的に言われるのだが、これ観てたら「別にええんちゃう?」って思わせてくれる。

・後半、先に主人公を死なせる、っていう、まぁいまの邦画では到底観られないような、凝った脚本構成。超絶技巧だと思う。

・異常な演技の組み立て方。特に志村喬の変態レベルの演技力、対照的に、小田切えみのおそらくその人そのままの感じを生かした演技。

ま、だいたいこんな感じ。たぶん、あとからもっと出てくると思うのだが、とりあえず。

いやーすげぇよ、マジ観てる途中、文字通り前のめりになって観るとこあったからね。

え、てかよく考えたら、おれ初めて黒澤明観たわ!やば。
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