Jun潤

ソウルフル・ワールドのJun潤のレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
3.8
2022.04.09

目指せPIXAR制覇第三弾。

中学校で音楽教師をしているジョー・ガードナー。
正職員採用を受けるが、ジャズミュージシャンの夢を諦めきれずにいた。
そんな時、バンドデビューを果たした元教え子から連絡を受け、有名なドロシア・ウィリアムズのジャズ・クラブで演奏するチャンスを掴むが、マンホールに落ちて死んでしまう。
死後の世界に辿り着いたが、死んだことを受け入れられないジョーはソウルの世界へとさらに落ちていく。
そこは地上でどんな人間になるかを決める世界だった。
そこで地上へ帰るためには生きるための煌めきを見つける必要があることを知り、生まれる前のソウルのメンターとなる。
ジョーが出会ったのは生きるのを嫌がり、今まで偉人たちのメンターを拒絶し続けた22番のソウルだった。
22番に煌めきを見つけさせようとするも上手くいかず、迷子になったソウルを救済するムーンウィンドに出会って地上に戻るが、22番がジョーの体に、ジョーのソウルが猫の体に入ってしまう。
ニューヨークにいたムーンウィンドと再会したジョーたちは、6時半に元の体に戻る約束をし、それまでにショーの準備を整えることとなる。

生まれた意味、生きる理由、生活、夢。
死ぬほどの意味が生きることにはあるのか、生きているからには煌めきがなければならないのか、生活するために生きるのか夢のために生きるのか。
生きるということをとことん詰めに詰めた作品でした。

生まれる前に生きることを怖がり、死んだ後に何もなかった人生を後悔する、そんなあり得ないことを描きながらも、夢中になることと強迫観念に取り憑かれると迷える魂になることという普遍的な描写も同時にありました。
大層なことをしないと生きている理由がないのか、ただ生きるのではなく夢を叶えなければならないのか、そんな命題を打ち出して「ただ生きる、空を見上げること、食べること、歩くこと、瞬間瞬間を生きるために生きる」という壮大な解を与えてくれる安心感のある作品でした。
しかもそれの対を成す描写として地下鉄で下を向いて死んだように生きる人々を描いていたのも粋でしたね。

アニメーション作品として見ると、作画の使い分けが印象に残りました。
地上の生活はこれまでのピクサー作品と比べても特徴的な現実感のある作画、ソウルの世界はファンタジー世界観にふさわしいファンシーな作画、そして二つの世界の間、宇宙の法則や概念的な世界は幾何学的というか芸術的というか、とにかく神秘的な雰囲気の作画でした。
音楽も舞台に合わせてジャズ調だったりスピリチュアルだったり童謡のようだったり、3つの世界観を個別に楽しめるような仕上がりでした。

今回吹替版での視聴で、日本語版キャストはジョーを浜野健太、22番を川栄李奈が演じていましたが、どちらも非声優とは思えないほど上手い、というよりキャラクターにマッチしていました。
Jun潤

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