良質な音楽に包まれる幸せな2時間あまり。
この手の映画は劇場に限ります。
アメリカ、オランダ、ドイツの映像も美しい。
女性指揮者のパイオニアとなったアントニア・ブリコの実話に基づくお話。
オランダ映画です。
監督も主演3人もデータなし(Filmarks)。
出発点は1926年ニューヨーク。指揮者(The Conductorが原題)を目指す彼女は劇場で働いています。
オランダからの移民で貧しい家庭に育ちました。
そんな彼女ですが音楽愛が凄まじい。
演奏が始まる寸前になると気もそぞろ、ついには椅子を自分で持ち込んで最前列で鑑賞。当然追い出されてクビになります。
ここで彼女を追い出した御曹司がのちにエンディングで重要な役割を果たします。
強く、美しく才能のある女性です(クリスタン・デ・ブラーンというオランダの女優が熱演)。
ちょっと男顔ですがキラキラして魅力的な33歳。
アントニアはついには指揮者となり女性だけのオーケストラを持つに至ります。
女性の人権が顧みられず社会進出もままならない時代です。
増してや男社会の指揮者、そこで差別と戦いながら一歩一歩進むアントニア。
フェアな有名指揮者の薫陶を受け、様々な挫折を経験しながらついには世間やエレノア・ルーズベルトに認められるに至ります。
(ドイツ系の指揮者ですがアメリカ国家の演奏を拒み投獄された過去がある)。
しかしながら、エンドロールでは現在に至っても圧倒的に男性優位の指揮者社会に抗議をしているようでもあります。
当然セクハラ、パワハラ、なんでもありです。
貧しい養父母、出生の秘密、御曹司との儚い恋。
彼女をサポートし続けるドラッグバーのミュージシャンたち。
特に性同一障害だと最後にわかるロビンは最大の理解者でパトロンでした。
幼女の彼女を音楽の道に導くことになる密林の聖者シュヴァイツァー博士(オルガン奏者だったのか ー 更に神学者、哲学者でもあったマルチな人なのですね)。
バッハを始めとするヨーロッパのクラシック音楽たち、ガーシュイン、そして酒場のジャズ。
強く情熱的な主人公と支える優しい人たち。
心温まるひと時でした。