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恋の門のtakのレビュー・感想・評価

恋の門(2004年製作の映画)
3.1
自称漫画芸術家の貧乏青年門と、コスプレ命のオタクOL恋乃がくりひろげる恋の騒動を描いたラブコメディ。原作のコミックはよく知らないが、初監督の松尾スズキが斬新な演出でマンガ以上にマンガぽい映像を見せる力作だ。コスプレやコミケや同人誌、アニソンなどオタク文化がふんだんに出てくるので、こうしたサブカルチャーに理解があるかどうかで観る人を選ぶ映画かもしれない。

常にビデオカメラ構えてる恋乃の上司、極彩色の服着たアパートの住民(忌野清志郎)、イメクラの人々、アニソンの帝王セイキ様、恋乃の両親のコスプレ姿。脇役の一人一人まで、出てくる人々はとにかく変わった人だらけ。観ていて呆気にとられている自分がいるのだが、それでも声をあげて笑っちゃう。うん、楽しい、楽しい。

確かに映画を構成している要素はかなりブッ飛んだものだけど、それでも主人公二人がそのまま恋に突っ走っていいのか悩んだりする姿は、恋愛映画の王道でもある。芸術を貫こうとする頑なな門と、好きなことを楽しんでいるオタクな恋乃。マンガという共通点こそあっても全然違う。お互いを受け入れるべきか悩む。紆余曲折を乗り越えたクライマックス。恋乃の成功を祝うパーティに駆けつける門、そして結ばれる二人。もちろん登場の仕方や姿は常軌を逸しているけど。

松尾スズキが演ずる元売れっ子漫画家が、暴走する二人とは違って落ち着いた役柄で素敵だ。「好き勝手やってるヤツには、好き勝手言ってやらないと、好き勝手しているってことがわからないんだよ。」と、彼を立ち直らせるきっかけを作ってくれる、今はマンガバーを営んでいる彼。マンガを書く原動力(=女性)を失った過去が明らかになる場面、また恋乃によって再びペンをとる意欲を得る場面の真剣な表情がとてもいい。バーの常連の芸術家を演ずる小島聖もとっても魅力的。忌野清志郎とサンボマスターが登場するミュージカルシーンがまた嬉しい。

三人が勝負をかけてまんがを書く場面が好き。それぞれのやり方で好きなことに没頭することの気持ちよさ。好きなことを好きと言えるのは、本当に幸せなことだね。イデオンや999のコスプレをする平泉成と大竹しのぶにも、好きなことを貫く喜びを感じずにはいられない。好みの分かれる映画ではあるだろうが、嫌いじゃない。
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