まーろう

アルプススタンドのはしの方のまーろうのレビュー・感想・評価

5.0
最高でした。
野球のシーンが一切出てこない野球映画。
青春のはしの方にいる高校生たちの淡々とした会話劇が、予想外の試合展開と観客の歓声と吹奏楽部の演奏と重なりながら怒涛の盛り上がりを見せていくのが熱かったです。

話題の中心人物が姿を見せないという意味では『桐島、部活やめるってよ』に通じるところがありますが、この映画の素晴らしいところは桐島における前田(神木くん)も誰かの「桐島」になっているんだと示しているところです。園田はもちろんカッコいいし、矢野も最高。

原作が高校演劇ということで、パンフレットには舞台版のシナリオが載っているのですが(贅沢すぎる)、映画のラストシーンがオリジナルだと知って驚愕。でもそれこそが青春の真っ只中にいる高校演劇の世界と、青春を通り過ぎたあとのことを知っている大人たちが作る映画の世界の違いなんだと思ったり。

2001年の『ウォーターボーイズ』から始まった部活系映画ブームは2012年の『桐島、部活やめるってよ』である種の集大成を迎えた感がありますが、2020年になって『のぼる小寺さん』『アルプススタンドのはしの方』と桐島の世界を更新するような作品が立て続けに公開されることに感慨深いものがあります。

青春のはしの方にいてもどかしさを感じているのが『アルプススタンドのはしの方』(僕には十分眩しいですが)なら、はしの方でも好きなことをやっているのが『桐島、部活やめるってよ』で、好きなことに夢中ではしとか真ん中とか関係なくなってるのが『映像研には手を出すな!』なんですよ。全部素敵。

アルプススタンドのはしの方、あらゆる部活動の全国大会が中止になった2020年に公開されたことで、台詞の一つ一つに別の意味合いも感じ取れてしまうんですけど、そのこと自体が、この作品が今の時代に相応しいものであることを証明しているのだと思います。
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