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ホドロフスキーのサイコマジックのMikiMickleのレビュー・感想・評価

3.9
監督・脚本・主演はもちろん題名のとおり、鬼才アレハンドロ・ホドロフスキー。
91歳の彼が50年前から独自で進めているのが“サイコマジック”という心理療法。一般的な精神分析セラピーではなく、アートとしてのセラピーであり、言葉ではなく行為で行っていくというもの。

彼の半自伝作「リアリティのダンス」「エンドレスポエトリー」はまさに彼自身のトラウマを映画で再体験して昇華させるというもので、それこそがサイコマジックだったのだが、
この映画は、そういった過去の作品を紐解きつつ、数々の深いトラウマを抱えた患者たちを彼の手で癒していくというドキュメンタリー。

そのやり方はぶっとんでいて通常ではなく、驚愕しかない。異常。ホドロフスキーにしか出来ない。まさに前衛的アート。
生や死や苦しみなどの疑似体験は異様でありつつも理にかなっており、彼らの無意識に働きかけ、癒しとなる。
そして、美しさと恐ろしさが共存している。ユーモアさとグロテスクさと悪趣味さも。非常に生々しい。

驚きの連続の中、カルト宗教と教祖とも思えるような展開になるが、唯一無二のアーティストとしての彼はそれとは一線を画していくのが意図的であり、既存の芸術とも違う尋常ではない特質性がある。

そして感じる ホドロフスキーの愛と優しさ。ドキュメンタリー「ホドロフスキーのDUNE」で感じたのは彼の溢れすぎるパッションと情熱と若さだったけれど、今作では彼がいかに深い愛情に溢れているのかも伝わってきた。だから彼の作品にはパワーがあるのだと思う。

ゆっくりした映画なのに、様々な感情が呼び起こされて揺さぶられ、刺激させられ、考えさせられ、感動までする狂気の104分間だった。
言葉では説明出来ない。

映画館で観れて本当に良かった。
ますますホドロフスキーの事が好きになったし、もう一度彼の作品を全て見直したら、不可思議な描写たちも理解出来るのかもしれない。
サイコマジックも受けれるものだったら1度受けてみたい。倫理観とか人生観がガラッと変わるだろうな。←信者www
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