ひのらんげ

ソワレのひのらんげのネタバレレビュー・内容・結末

ソワレ(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

散りばめられた違和感の回収に鳥肌。

俳優の卵「翔太」は劇団では食えず、詐欺の受け子をして何とかして夢をつないでいる若者。ある夏にその劇団は地方の高齢者施設で泊りがけで演劇をレクチャーすることになり、翔太も参加する。

その施設では「タカラ」という名の少女が働いており、タカラはちょうどそのころ、突然届いた強姦致傷の罪で刑務所に入所していた父が釈放される旨の通知を読んで、恐怖に硬直していた。

施設での稽古終わりで、翔太たちはタカラを夏祭りに誘うとタカラはこれに応じ家に着替えに戻る。時間になり翔太がタカラを迎えに行くと、そこにはタカラの父がいて、事件が起こっていた。そして、さらなる事件が。

とっさに逃げる翔太とタカラ。しかし衝動的な逃避行はうまくいくはずもなく、どこに頼ろうとも跳ね返され、幼稚な逃走に追手が迫る。

もう何もなくなり、疲れ果てて。
離れ離れになった翔太とタカラ。ラストに衝撃的なつながりが明かされる。

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物語の前半は、ほとんど意味のないような会話が続き、展開が読めなかった。なんだろうこの違和感。と。(主には物語への不安だったと思う)ただ、これは最後に一気に回収されます。違和感を回収するというすごく難しい事をやってのけた物語でした。ラストはびっくりしながら涙腺が緩みました。

若い二人のその後の未来を案じずにいられません。
ソワレ=日はまた昇る と解釈したいくらいです。

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翔太は突然の事で視野狭窄し、暗い万華鏡のように形もわからずぐるぐる回りはじめる。脊髄反射な若い正義についつい「自分だったら」と考えてしまいます。

また、タカラの生い立ちは厳しいものでしたので、その過酷な日々を慮ると「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いが頭をよぎります。例外はないのか、と。

翔太はタカラのためにと東へ西へと奔走するわけですが、タカラの透明感はみるみる失われ、輝かず、象徴的に汚れた靴のまま袋小路と知っていながら進んでいくようでした。そこには「なぜ」はもうありませんでした。
必死に逃げる二人。そもそも何から逃げているのかもわからなかったのかもしれません。まったく論理的ではない衝動。

一瞬、ちょっと羨ましな、と思ったりしました。

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「傷つくために生まれたんじゃない」
そのとおりです。これは完全に真であり、共感する強い言葉でした。

辛いときにどうやって笑うのかは、本来生まれて「泣く」の次に学習することかもしれません。思春期に後天的に手に入れることは、とても難しいことだと思う。

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「耐雪梅花麗」はあまり好きな言葉ではありません。少なくともこの映画の中では美しく響かないと思う。

もうひとつ、高齢者施設での仕事を立場説明の象徴としているようだったけど、その表現はいつまでまかり通るのか。映画の力でこそ、映画から変えるべきではないだろうか。
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