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SEOBOK/ソボクのmatchypotterのレビュー・感想・評価

SEOBOK/ソボク(2021年製作の映画)
3.6
コンユ、『新感染』『密偵』以来。
最近結構韓国映画観てるのに久しぶり。久しぶりに観てもカッコいい。クソカッコいい。
役柄的に、冒頭から少し憔悴していてやつれて疲れてる感じがまた良い。このくたびれた感じ。

日本で言うと大沢たかお、西島秀俊が演じる役に多いシュッとしててどこか世を捨ててると言うか、影があって何事も斜めに見てる感じで、内面がこじれてるけど、芯が強くて、やる時はやる男。そして、イイ男。

脳の腫瘍によって余命幾ばくかで情報局を辞めた男。ろくに眠ることもできないその男が、辞めた情報局に拉致まがいに連れてこられて再び任務を任される。

それは、“iPS細胞”を宿した人間のクローンの護衛。
“ソボク”と呼ばれるそのクローンは、人間の細胞の疾患すらも作り変えることができる細胞を持っている唯一の“実験成功体”。

人類の未来を背負う“ソボク”と、その彼の移送を任される致命的疾患で余命のない男ギホン。
輸送が始まって早々にどこかから情報をかぎつけられて襲撃に遭い、いきなり2人だけになってしまう。

何だかよくわからない屈強な傭兵集団みたいな奴らに拉致されながら、2人で窮地を乗り越える。

クローンで特異的な能力を持ち自分の目的を知る“ソボク”は感情もあるんだか無いんだか、そもそも人間として人間らしいことを理解してるのかすら怪しい。

明らかに機械的で論理的な思考のみで淡々とするソボクと2人。
ソボクからすれば触れたことも体感したこともない俗世間に紛れながら、2人の安らぎを求める道中が始まる、、、。

途中で早速、素朴の風体が不審がられて商店街の服屋で着替えるが、この服が、なんか絵になる。着回しが一周回ってめちゃカッコいい感じのソボク。

人間じみたことを何も知らないソボクの、人類の未来を担う重大な要素を持つ実験体なのに人類のことを何も知らないソボクが、ギホンと過ごす危険で潜んだ道中で感じる“人間”。

実験中に色々させられた辛いことしかないソボクにとってのこの道中。身の危険しかないが、研究所にも帰りたくもない。

何かに巻き込まれ絶体絶命の時に発動する彼の“力”。

人は“死”があるから“生”が輝く、人生を謳歌する。人が人でいられる。
しかし、ソボクが持つ力によって人類がその“死”を超越したならば、、、。
だとしたら、それでも結果的に生み出されて確実に存在するソボクの意味とは。

ソボクの力で自分の疾患が治癒できる可能性に賭けて守るギホンと、自分の存在価値も人類の価値も測りかねるソボク。

この2人の“死”と向き合いながら少しでも人間らしい“生”にしがみつく物語。

韓国にかかるとクローンやら“iPS細胞”やら特殊能力やらこの手のSFドラマであっても、地べたを這うような薄汚れても体温がある泥臭い人間臭さを感じる。

ソボクからの禅問答みたいな小さな他愛もない質問攻めで自分も何かを思い出すギホン、ギホンから返ってくる言葉で本来の人間の破片を集めるソボク。

ほぼほぼロードムービーのテイストで、ド派手なアクションや脱出劇みたいな要素は少なめ。
その分、静けさと喧騒のGAPと、人間またはクローンの尊厳や剥き出しの“生”への渇望、人類の飽くなき欲望とその代償みたいな部分が浮き彫りになる作品。


F:1988
M:6525
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