つエ

少年の君のつエのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
4.3
重力下のふたり

中国の学歴社会はここまで苛烈なのかと思わされる作品
話を追って行くとちょっと東野圭吾っぽかったり、いじめがテーマで時折スマホやSNS、防犯カメラの映像が挿まれる同時代的な感覚で去年の内藤瑛亮「許された子どもたち」を思いだしたりした
なので隣国の話でヘビーではあるけれどとっつきやすさはあるように感じた

厳しい受験競争とそのストレスから起こるいじめの渦中にいる少女と、貧困と犯罪・暴力のストリートに生きる少年を主人公にしているので、彼らの後ろには空や見晴らしのいい場所ではなく、彼らを閉じ込める高い壁のように建つ街並や校舎、密集して流れていく人の群れ、受験の辛苦を表すような階段が背景として映り、そこで追い詰められる人物を捉えたクローズアップが多用されているのが印象的

そういう意味ではとても視野が狭い、見通しの悪い視点からの物語でそれは最後まで変わらないのだが、終盤、その狭くヴァルネラブルだったクローズアップがふたつ繋げられることで、歪で危ういけれど強さや美しさを見せるシーンがあって、ここはとても映画的で良いと思った

主演ふたり、特にチョウ・ドンユィの、その時々の感情を顔のパーツ全部で前に押し出すような表情が凄かった
つエ

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