jonajona

少年の君のjonajonaのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
5.0
子供でいることも許されず
大人になるには早すぎたこどもたち

イジメと受験戦争、その背景にある貧富の格差という中国の社会問題の多くに深く切り込んだ内容ながら、
様々な問題の皺寄せを食う形で追い詰められていくのは将来を担う若い世代の小さな少年少女達であることも同時にストーリーとして描くこのたしかさ、巧みさ。
下の人間がさらに下の人間と出会うことで物語が動き出す、このつくりは『パラサイト』にも通じる。本作の魅力は、それが足の引っ張り合いじゃなく抜け出す為に互いを思い合う愛情に転じる展開のストレートさにある。


親が出稼ぎで一年帰らないとかマジであるのんやね…主人公たちのつらさが痛いほど伝わってきて演出力の誠実さに泣けてくる。
はじまりから冒頭の自殺少女の姿を見せない演出に痺れた。彼女の死が主人公にもたらしたもの、世界と彼女の関係性しか画面上に表れてこないのがうまい。

すべて素晴らしいんですが、
1番泣けたのは中盤以降の少年が『彼女を守る』契約が成立したあとの2パート目の導入部。
彼女側から視点がうつり、少年側からの視点になって彼の生活が初めてダイジェストで現れだすシーン。賭博に万引き、喧嘩とろくでもない日々の中で見てはじめて『なぜ彼女を守ろうとしだすのか』が見えてくる。彼はだれかを守るという行為で自分の生活に希望を見出したかったんだと分かる一連のシークエンスが涙を誘う。

ふたりが一緒にいるシーンではほとんど言葉を交わさずに通じ合ってる感じが素晴らしい。そこまでの互いの人生のシーンシーンの積み重ねがしっかりしてるから、彼らに会話がなくても心がこちらまで伝わってくる。

終わり所も1番エモーショナルな瞬間でおわるんじゃなく、そのこども目線を離れた先の現実の展開を最終局においてるかんじもクレバーで好き。

CMで見た並木道をバラバラに歩いてるのを目の前から離れて捉えた絵がめっちゃかっこよくて、好きだったのになんで無いん…😢それは無くてちょっとだけ残念…

たまにあるね、CMにはあるけど映画では落ちてるシーンって。何でアレ落としたんだろ…汗

イジメを題材にしてちゃんとエンターテイメントにするのって本当に難しいから、どうしても加点しちゃう。
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