問答無用でこれは凄い!って言える作品でしたよ。こういうのって単なる社会派映画として語られがちなんですけど、いやいや、そうじゃないのですよ。これはね、完全に「感情で殴ってくる」映画です。
まず、主演のチョウ・ドンユイとイー・ヤンチェンシー、二人ともハンパじゃなかったですね。特にチョウ・ドンユイ、彼女は30歳手前なのに高校生役をやっても違和感がないどころか、完全にその世界に生きてるんですよね。いやもう、演技とかいう次元じゃなくて、“そこに存在してた”って感じですね。
で、ストーリーとしては、いじめ問題を真正面から描いてるんですけど、これがただのかわいそうな話で終わらない。日本のいじめ問題を扱う映画って、わりと道徳的な視点で「いじめはダメ!」って言いたがるんですけど、『少年の君』は、そんなお説教の映画じゃなくて、「これはもう、どうしようもない現実なんだ」って見せつけてくる。これ、ある種の絶望映画です。
それでいて、ただの絶望で終わらないのがすごい。イー・ヤンチェンシー演じる不良少年・シャオベイが、もう完全に“犬”なんですよ。守るって決めたら絶対に守るし、何があっても裏切らない。その一途さが、あまりにも純粋すぎて、逆に痛い。でも、その“痛さ”がこの映画の強さになってるんですよね。彼が選んだ行動のすべてが、「こうするしかなかった」という必然性を持ってる。そこに甘さがないんです。
で、極めつけはラストですよね。ネタバレはしませんけど、もうね、これは「選ばれた人間だけができる生き方」ってやつですよ。普通の人はああいう選択、できない。だからこそ、美しいんですよね。
久々に「映画を観た!」って思わせてくれる作品でした。