ちろる

オフィーリア 奪われた王国のちろるのレビュー・感想・評価

3.7
欲望に塗れ、正気を失った先に未来はない。
憎しみや恨み、怒りや嫉妬全ての感情を取り除き冷静になったものだけが平穏な未来を勝ち取ることができる。

オフィーリアの物語ではあるけれど、同時にハムレットの母、ガートルードの物語でもあるように感じた。

オープニングはジョン・エヴァレット・ミレーの「オフィーリア」を思わせるこの世で最も美しい入水自殺シーン。
スターウォーズシリーズでの力強い美が印象的なデイジー・リドリーが「ハムレット」の中で儚げな存在のオフィーリアを演じると知って意外であったけど、なるほど少し新解釈を加えたもう一つのオフィーリアを描いたこちらの作品においては彼女の意志の強そうな瞳がぴったりとはまっていた。

シェイクスピアの他の戯曲(ロミオ&ジュリエット感)新解釈を入れた事で、賛否あったようだけど、プロットは原作とは多少前後しており、ハムレットが気が狂った(フリをした)のちになぜ、オフィーリアがあのように絶望して「死」を選ぶのかが理解できずにいた私としては、勇気と賢さのある本作のオフィーリア像の方が十分に納得がいく。
また、彼女の一貫した逞しさとは対照的に誰かに依存しなければ生きていく事ができない、ある意味人間らしい弱さを見せてくれるナオミ・ワッツ演じるお妃ガートルードの存在もオフィーリアと肩を並べるくらいに印象的だった。
それにしても一人二役でお妃と魔女を演じたナオミ・ワッツ。
人々に見捨てられた魔女役でも隠せないほどにお美しい。
素晴らしい衣装に身を包むデイジーandナオミにずっと眼福の美しい映像の作品でした。
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