タマル

ブラック・レインのタマルのレビュー・感想・評価

ブラック・レイン(1989年製作の映画)
3.7
仮にこれがアメリカ人以外だったとして。何か支障がありますか?
高倉健のセリフとか、組長のセリフとか、アメリカに関わるセリフ全てカットしても全然成り立つ映画でしたよね、これ。アメリカと日本の関わりを問題にしたいなら、冒頭のアメリカのシーンに、よりアメリカらしさを集積させておくべきでした。
また、バディ物としても微妙。作中の言葉を借りれば「かます」キャラであるダグラスが、あまりガルシアを必要としていたように思えない。だから、後の強い動機となるはずだった喪失感と、伴う怒りに感して、それほど共感できませんでした。
あと、唐突な恋愛要素(ラストのキス)が目障りとか、全体的に行き当たりで物事に当たりすぎだろとか色々不満はあります。

だけど、好き。これはひとえに、「俳優たちの名演」と「リドリー・スコット力」に尽きると思います。特に松田優作さん、サイコー。序盤の小悪党っぽい感じから間違いなく小悪党なスーツを盗み取るくだり。終盤の会談シーンでの大物オーラ、そして逃亡シーンでやはり漂う小悪党オーラ。完璧です。
演出としては、シークエンスごとに前のシーンとの繋がりが少しわからなくさせられます。そして、比較的緩いシーン中に何をしているかを理解していると、唐突になにか決定的な出来事や、セリフが入れられます。この緩急。心地いい。気づくと映画が終わっていたパターンでした。

そんなわけで、気に食わないところより、個人的には印象深いシーンを多く与えてくれた、大切な一本になりました。
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