イチロヲ

雁の寺のイチロヲのレビュー・感想・評価

雁の寺(1962年製作の映画)
4.0
禅寺の濡れ坊主(三島雅夫)と情交を結んでいる奉公人の女性(若尾文子)が、邪険に扱われている寡黙な小僧(高見国一)に接近していく。水上勉の同名小説を映像化している、ヒューマン・ドラマ。

若尾文子演じる主人公は、安定した生活を得るために、坊主の慰み者になることを選んでいる人物。一方、寺に従事している小僧は、坊主の醜い面を横目にしながら、修行を積んでいる人物。坊主と小僧が、それぞれの立場から若尾文子に「仏」を視ていく。

中盤に入ると、不幸な生い立ちをもつ小僧が、若尾文子に「母性」を覚える。そして、濡れ坊主が行方不明になってしまう。予想通りの展開を見せるが、小僧の愛憎と葛藤、そこに付随する猟奇性が、ビンビンに伝わってくる。

「僧侶の存在意義」と「性衝動の波及力」に言及しているため、世代を超えた普遍性が内包されている。聖性と邪性を兼ね備えた若尾文子の説得力が凄まじい限りであり、白足袋を脱いで素足を晒す仕草だけで、戒律なんてぶっ飛んでしまう。
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