モンティニーの狼男爵

Mank/マンクのモンティニーの狼男爵のレビュー・感想・評価

Mank/マンク(2020年製作の映画)
4.0
時代背景にも疎いし、難しい難しいと言われてるのをよく耳にしていたから、割と構えて望んだ本作。序盤から相関図がわからず「こやつは何者、、、?」となって、早々にそのあたりは諦めて臨みました笑

友をある事情で亡くしたマンクが、権力と私利私欲に埋没する政治家やスタジオに一矢報いる話とすれば、すごく面白かった。
飄々とあっけらかんとしている彼が、自分のキャリアやその先の可能性を棒に振る覚悟で書き上げた脚本、そして、それに関して契約を反故にするほどの覚悟を持って望んだこと。
その脚本がアカデミー脚本賞を受賞した『市民ケーン』であること。

ユーモラスな会話劇がモノクロの裏にある感情を際立たせていたように思う。
実際に会話自体は理知に富んでて、アイロニーを含んだ「お笑い」になっていた。フリとオチが効いているというか。

それ以外にも面白いなと思ったのが、右上に時折映る黒い点。フィルムの頃を思いだすその黒点を、気づくか気づかないかの微妙なラインで演出されていた。それを知っているかどうかでは物語にさして影響がないのにやってしまう所が、『ファイト・クラブ』の監督さんだなニヤニヤしてしてしまった。

脚本の欄がジャック・フィンチャーという人になっていて、一体誰だろうと調べてみたら監督のお父さんらしかった。なんでもこの作品自体が父の遺稿らしい。デヴィッド自身が脚色(?)をしているのは間違いないだろうに、自分の名前を排してクレジットに載せるあたり。

「暗闇で見た映画のことを観客は信じる」という、製作者ならではの現実めいた映画館発言をさせておいて、監督自身は配信を前提としているNETFLIXと4年間の独占契約をしているあたり。

私を含めた一観客としてはきっとどうでもいいようなことをサラッとやるあたりが、この映画創るにあたっての意義だったのかな。
感慨深い。