2021.12.28
第93回アカデミー賞受賞作品。
最多となる10部門でノミネートされ、美術賞と撮影賞を受賞。
世界の歴代映画の中でベストワンと謳われる「市民ケーン」を執筆したハーマン・J・マンキウィッツの視点から、1930年代のハリウッドを描いた伝記作品。
交通事故で左脚を骨折した脚本家のマンクは、脚本執筆の締切に追われていたためそれでも仕事に没頭していた。
1930年代の出来事を回想しながら、執筆作業は進んでいく。
恥ずかしながら「市民ケーン」は未視聴で、ぶっちゃけ存在もよくわかっていない状態での視聴でした。
なのでなるほどこんな事情があったのかというよりも、1930年代の世相を背景に脚本執筆が進んでいく様を見ているような気分でした。
脚本が執筆されていく過程とともに回想として描かれていくのは、世界恐慌や選挙などの時代の奔流。
実情には詳しくありませんが、映画業界の財政状況や政治と映画の関わりなど、当時の映画制作に関わる人物や制作陣の動きなどがよく伝わってきました。
1930年代で描かれているのはシリアスな展開でしたが、マンクや他のキャラクターたちの台詞回しがいい具合にニヤニヤさせてくる作りになっていて、なだらかな展開の中でも飽きずに見ることができました。
画面も終始モノクロで、昔の映画というとカクカクした動きのイメージでしたが、最近制作された作品のためスムーズに動くキャラクターたち、そのような違和感が常にあったからこそ、約100年前の出来事にしても登場人物の心情などがちゃんと伝わってきましたし、現代劇のように受け取ることもできる作品だった気がします。
美術賞を受賞した作品ということで、当時の生活や世相、文化などがよくわかるし、個人的に馴染みのない国の過去の出来事だったため、完成度の高い一つの世界観を感じることができた作品でした。