YukiSano

シャン・チー/テン・リングスの伝説のYukiSanoのレビュー・感想・評価

4.5
MCU単独映画の最高傑作。
香港映画の幕の内弁当。
アジア差別への解答。
ルッキズムへの挑戦。

ハリウッドの常識を全部覆して2021年米国興行収入暫定1位。

コロナで劇場を逃したことを最高に後悔しているが、PCの小さな画面でも留まることを知らない豪快なアクションと繊細な心理描写。よくある話に見せて、小さな意外性の積み重ねでステレオタイプに見えなくなる工夫の細やかさ。笑いと泣きの緩急。古典と現代性の融合。斬新さはなくとも娯楽映画としてのバランスが素晴らしい。

監督のダニエルクレットンは中華系かと思いきや、日系アメリカン。つまりこれは中華代表というよりも、アジア全域を含めた総力戦と捉えた。ハリウッドだけでなく世界のアジア人全ての代表として新しい時代を切り開こうという気概に満ちている。マーベルのプロデュース力や監督の才能だけでなく、目標に掲げた理念の高さがこの作品のクオリティを底上げしている。

ラストのドラゴンは、中華伝説だけでなく、何気に千と千尋オマージュにも思えるくらいに極彩色のアジアを堪能できる。

アジアの至宝トニーレオンの魅力が爆発しミシェールヨーとの再共演が、世界一の人気シリーズMCUで果たされた時、震えるような感激に包まれた。

主人公の握りしめられた拳を真っ直ぐ開かせるミシェールの眼差しが最高。竜の心を受け止める流水のようなクンフーを手に入れるシャンチー。そして父との確執を超えた時に、光と闇、先祖の血を受け入れ覚醒する。まさに父権が崩壊した西洋圏に必要な精神とは何かを示しているかのようだった。敵とも和解し、手を取り合うことも示される。

アジアの心を体現するヒーローが誕生し、新しい時代が始まりを告げた。

最後のウォンとのカラオケは、アジア発の英雄が誕生したことを祝う宴。続編にはアジアのマスター、チョウ・ユンファの登場を願います。

また、MCUでもスターウォーズでも良いから日本のサムライヒーローの爆誕を心待ちにしてます。

本当に最高の男の子映画を有り難う。
YukiSano

YukiSano